10月14日に西川美和監督の映画永い言い訳が公開になるのでインタビュー記事を抜粋した

10月14日に西川美和監督の映画永い言い訳が公開になるので数あるインタビュー記事の中から読んでいて、おっと思えるものを集めて抜粋しました。

作家伊坂幸太郎さんとの対談。

伊坂幸太郎さんの小説と西川監督の作品で重なるところはあるんでしょうか。

伊坂 僕は、喜怒哀楽に分類できない感動を与えたいってすごく思うんですね。悲しいんだか、ハッピーなんだかわからないっていう。映画ってそういう作品が多いと思うんですよ。そういう感情を作り出せるのは、ひとつは「ここまで」っていうふうに自由に結末をつけることができるフィクションのメリットだと思うんですよね。


西川 まったく仰るとおりです。けれど観客の中には、「あのあとどうなったの?」とか、「あのラストをどう受け止めればいいの?」と聞いてくる方がわりと多い。それは結構辛いことなんですよね。正直なことを言えば、私自身はまったくその後のことは考えていないので。


西川 私も恋愛のプロセスには何故か物語としての魅力を感じられなくて。ただ夫婦はいいと思うんですよ、関係がより華やかに進化しないところが。進化の成れの果て、というのがいい。その後の更なるさまざまな変化には興味があるし、そういう物語は面白いと思う。



f:id:mount_po:20160923111331j:plain
特別対談 伊坂幸太郎×西川美和 | ポプラビーチ


続いては日経トレンディネットからディアドクターの公開を控えてのインタビュー

主演を鶴瓶さんにしたのはなぜでしょうか。

――(鶴瓶さんは)会って実際はどんな方でしたか?


西川: 年齢・性別を感じさせない人ですね。オバちゃんキャラもあるし、スケベなオッさんキャラもある。距離を感じさせない人。普通、芸人さんは、いざ会ってみると生真面目で緊張感を与える人も多いんですが、鶴瓶さんはテレビで見たまんまでもないのに、人の懐にスッと入ってくる。こちら側が緊張していることは百も承知で、それを解いていくことから始める人。出会いが結構感激的で、それを脚本に生かした部分もあるんです。瑛太くんが田んぼで事故って、目が覚めたとき、診察室をのぞくと老人でいっぱい。あわてて自己紹介しようとしてかしこまっていると、鶴瓶先生が「分かってます。分かってます。伊野でございます。」と言うんですが、ここは、初めて会ったときの「鶴瓶と申します」という挨拶をそのまま使って、書き加えました。
 底無し沼のような、というか、なんでも飲み込んでいく度量の広さも持ち合わせている方でしたね。

ディアドクターの中身についても話してくれています。

――伊野はいつぐらいから村から消えようと思っていたのでしょう?


西川: 彼は、ずーっと村から消えたいと、思っていたんです。本編2時間の冒頭から彼は「できれば一刻も早く村を去りたい」という思いでいた、という設定です。


――看護師(余貴美子)は、どの時点から伊野が贋医者だと気づいていたのでしょうか?


西川: 気胸のオペをするとき、です。僻地の看護師というのは、なんでも診なければいけないし、その都度、医学書を勉強して知識を吸収する。そして医者の得意分野でないところはカバーリングしていく。まさか、彼女も伊野が無免許だとは思ってなかったでしょうが。


――ラストシーンはよかったです。


西川: あのシーンは、なくてもいいかな、と考えたりしたんですよ。



f:id:mount_po:20160923111246j:plain
trendy.nikkeibp.co.jp


続いて夢売るふたりについてのインタビューです


西川美和監督の作品は新作永い言い訳も含めて男性が主役だったり男性目線の作品が多い気がします。夢売るふたりは女性(松たか子)が主になる話で、インタビューでは主に女性についての話でした。

——西川さんは、これまでの作品では主に男性を描いてきた印象があります。今回はなぜ、女性を描こうと思われたんですか?


確かに女性を描くことは避けてきたところではありますね。デビュー作の『蛇いちご』は主人公が女性ですが、基本的には、男性を描くほうが好きだし、気楽だったんです。男の人の物語のほうがわくわくする。
それに、最初から女の監督が女の世界を描いてしまうと、女性しか見てくれないものになりそうな気もしていて……。普段から男の人って、女同士の閉じた世界が苦手でしょう? 2作目の『ゆれる』の主人公を兄弟にしたのも、姉妹にするとどろどろしそうだと思ったから(笑)


——だから、心のどこかで騙されるかもと気づいていてもお金を出してしまう?


そうなんです。手助けしない自分が許せないから出してしまう。それって、その女性が優しいからですよね。私、女性は思いやりの塊だなと思います。何だかんだいっても、すごく優しい。年々歳々、そう思うようになりました。


——まさに(笑)。男性は、目をそむけているのかもしれません。


女の本性が怖いんでしょうね。私は、男を愛して描いてきたのと同じように、女の人も愛して描いたつもりですけど、男の人は、この映画に登場する女たちが怖いみたいです。「特に、里子が怖い」って言いますよね。奥さんがあんな人だったら怖いって。でも、みんながああいう部分を持っていると思う。


——そうですね。


だから、ダンナさんが気づいていないだけなんだと思います(笑)



f:id:mount_po:20160923113050j:plain
allabout.co.jp


永い言い訳の撮影の中、過去作品について


コピーライターの方と加えた3人の対談で映画と広告について話されています。

福里:せっかくなので、『ディア・ドクター』のお話も聞いていいですか?


西川:2作目の『ゆれる』が小さい作品の割にヒットしまして、世間的な評判も高かった。当時30歳になったばかりで、日本映画の期待の星などと言われて、非常なプレッシャーを受けてしまって。自分は到底そう思えないのに、偽物を本物だと世間が仕立て上げたいだけなんじゃないかという思いがあって、偽医者の話を書いたんです。


福里:『ゆれる』の脚本を書き直しすぎて、出演する香川照之さんに「前の台本に戻してほしい」と言われたことがあるそうですね。


西川:そうなんです。「監督に俳優がこんなことを言うのは筋違いだろうけど、人生で俳優が監督にモノ申していいチャンスが3回あるなら、そのうちのカードの1枚を切ります」と言って、「2つ前の台本に戻してくれ」と言われたことがあったんです。


福里:香川さん、カッコいいですね。


西川:カッコいいんですよ。いろんな説明を台詞の中に理屈で込めて行くうちに、感情そのものの流れや爆発力は反比例して弱まった、ということを指摘されて、初稿を読み直したところ、とてもシンプルだということに気づくことができました。


西川:私が扱うテーマは、「最後はみんなが仲直りして幸せになったらハッピー!」とシンプルに片付けるわけにはいかないレベルで本編をこじらせてしまっていますし、私自身も「え、ここで終わりなの?」というラストが好きなんです。シドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』とか『狼たちの午後』のように、人生を丸く収めずに分断されて終わる方が、より生々しく生きられると思っているところがあって、影響されているのかもしれません。



f:id:mount_po:20160923113029j:plain
www.advertimes.com

いかがでしたでしょうか。西川監督好きすぎて気持ち悪いですか。あぁそうですか。
ということで新作永い言い訳は10月14日公開です。予告編はこちら。


映画『永い言い訳』予告編